楊家老架式太極拳は世界的な太極拳
楊家老架式太極拳の特徴は、動きが簡潔で、速度は均一であり、一瞬も途絶えることなく綿々と続いていく動きにあります。
その動きは、ときには軽やかであり、ときに敏活であり、ときに沈着です。
いわば剛と柔が一連の動きの中に陰陽として内包されているのです。
楊家三代目で、楊家老架式太極拳を完成させたとされている陽澄甫(ヤンチンプ)は、自らの拳をこう表現しています。
「太極拳は即ち柔の中に剛があり、綿の中に針が隠されている芸術である。」
まさに、武術としての伝統を伝えながら、心身を高める芸術の域まで太極拳を高めたというわけです。
楊家老架式太極拳の滑らかな動きは、姿勢に偏りがなく、緩やかに大きく、丸く円を描くように広がっていきます。
つねに前方をしっかりと見据えた視線と、穏やかな中にも厳しい鍛錬の成果が伝わってくる動きは、おかしがたい風格をたたえていると言っても良いでしょう。
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初めて楊家老架式太極拳の演技を見た人が、その「美しさ」に感動することが多いということからも想像いただけると思います。楊家老架式太極拳の呼吸法は決してむずかしくありません。
108式のゆったりとした動きをしていくうちに、呼吸もごく自然に深くゆったりとしたものになるのです。
意識することなく身体の深い部分から規則正しい呼吸を繰り返すことによって、体内の老廃物を含んだ呼気を対外に吐き出し、新鮮な酸素を充分に体内に吸気することが出来るのです。
規則正しい深い呼吸は、人間の精神をなによりも心地よく安定させます。そして、小さなことには動じない強い心、前向きな心をつくり出してくれるのです。
調身、調息、調心の三原則が、ゆったりとした一定の速度の練功(太極拳の練習)を通して、知らず知らずのうちに一体化され、身心が健康になっていく・・・・・・
このことが、楊家老架式太極拳が世界中でもっとも多くの人たちから親しまれる存在となっている理由といっていいでしょう。
現在、楊家太極拳は、伝統的な108式楊家老架式太極拳のほかに、より多くの人が練功できることを目的として、動きを簡略化したいくつかの方式が生まれています。
簡略化したものは「楊家簡化太極拳」と呼ばれ、24式、37式、42式などがあります。現在、アジア大会の種目となっている太極拳の70%は、楊式で、多くの国から選手が参加し、磨きぬかれた技が世界中の人々の前で競われています。しかしながら、なんといっても世界的に非常に高い評価を得ているのは伝統的な楊家老架式太極拳です。
中国や台湾はもちろん、諸外国の太極拳の専門家たちは、ほとんどが108式の楊家老架式太極拳を行っています。
その意味において、楊家老架式太極拳は、真に世界的太極拳といえるのです。
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