映画の時代 -1-


(C) illustration by 山中一夫&MOON

●はじめに

街を歩いていると目に飛び込んでくる映画の大看板。
大きいものになると畳何十枚にもなるものが、かっては少なくなかった。 これには、特別な思いが私の中にある・・・。

  私は、今年還暦を迎え定年退職をする。これを期に、過去を振り向いてみ ても許されるのではないかと思い、ささやかな体験を披露することにした。  まず、最初の煌めく時間を共有してくれた当時の上司、先輩、同僚に感謝 したい。それと”時代”に。

  その頃、そう1960年私は高校を卒業し、上京した。 人生の新舞台を首 都東京で迎えることになった。舞台は大きい。そこでの第一歩。期待に 胸をふるわせたものだ。 当時の若者は、今よりももっと東京に期待を寄せて いたものだ。 「若い根っこの会」など中卒の集団就職の人達が金の卵ともては やされ、TVにも盛んに出演していた。 ちょうど、坂本 九のジェンカ の節でおもちゃの竹製のヘビのように連なって踊っている画面が鮮やかに甦る。

20歳から23歳までの足掛け3年、私は新宿歌舞伎町にある映画の看板屋で修行をしていた。 この時代は映画界が最も華やかで、元気があった時代で、 日本の映画界の黄金期が形成されていった時代である。 また、東京が今のように世界都市になる基礎を造った東京オリンピック開催 までの時代である。私にとっては、まさに”大学”だった。


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